クラウンクラウンのミッションの一つは、この設備工事業界の地位向上です。

これは私、松本の強い想いをそのまま反映したものなのですが、その経緯等については後日クラウンクラウンブログにて書いてみたいと思います。

この業界の地位向上の妨げになっていると感じているものの一つに、仕事をしている人の中にプロとしての義務を果たせていない存在があることです。
プロとしての義務はいろいろありますが、無資格、または知識不足で工事を行っている人に焦点を当てたいと思います。
前者は論外ですが、後者の存在がとても多いのです。

資格に関しては一般の方ではよくわからなかったり、そもそも資格自体聞きなれないということもあるかと思います。ですが、プロとして仕事をする以上は知識を身に着けたうえで、技術と資格の取得が必須であると考えます。
ちなみに、この「プロとは呼べないのに工事を請け負っている人たち」のことを私どもは「器用な素人」と呼んでいます。

まず身近な工事で、無資格のまま行われていることが多い事例を以下に挙げます。
※工事そのものではなく、付随する工事の一部で資格が必要なものもあります。

  1. エアコン工事
  2. アンテナ工事
  3. ガスコンロ工事
  4. ガス湯沸かし器工事
  5. エコキュート工事
  6. 照明工事
  7. 温水洗浄便座工事
  8. その他の工事

【エアコン工事に関連する資格】

※以下の作業は資格がないと行ってはいけません。

  • 電気工事士
    • コンセントの形状変換が必要な場合
    • 取り外し、もしくは取り付けのエアコンが、電線を直接接続する場合※
  • 冷媒回収技術者※
    • 業務用エアコンの取り外しや点検で、フロンガスをエアコン本体の外に出す場合など

※取り外すエアコンが電源直結タイプであっても、事前に電気工事士により電源線自体が手前で外されている場合などは電気工事士の資格は必要ありません。
※冷媒回収技術者は国家資格ではありませんが、フロン回収・破壊法の省令で「十分な知見を有する者」として認められる資格となります。

【アンテナ工事に関連する資格】

  • 電気工事士
    • ブースター用に新規電源を設ける工事

アンテナ工事では、あまり資格が必要になるシーンは少ないのかもしれませんが、その分イレギュラーとして電気工事が必要になった時に無資格のまま作業をしてしまう傾向があるように思えます。
電気工事が必要な場合は、電気工事士免状を見せてもらうといいでしょう。
※電気工事を行う場合は携帯することが義務とされています。車の運転と同様ですね。

【ガスコンロ工事に関連する資格】

  • ガス可とう管接続工事監督者
    ガス機器設置スペシャリスト
    簡易内管施工士
    液化石油ガス設備士
    • ガスコンロの着脱など

あまり知られていなく、またわかりにくいのがガス関連の資格ですね。
良くも悪くもまさにこれこそ専門職とも言える職業だと思います。
上記の資格のうち最後の液化石油ガス設備士以外は国家資格ではありません。
プロパンガスは都市ガスに比べて扱いが難しいため、液化石油ガス設備士という国家資格を持たないと作業できないことになっています。
また、ガス可とう管接続工事監督者に関しては自らが行うだけではなく、監督する立場でもあるという業界資格、ガス機器設置スペシャリストは監督業はできませんが、さらに細かいことができる(知識と技能を有することを証明する)業界資格となります。
つまり、都市ガスのガスコンロを取り換える場合、可とう管の接続等に関しては、一般の方でも行ってもいいことになっています。
ただし、全くきちんとした知識を持たない方が目に見えないガスを扱うことは危険なのでできるだけ控えた方がいいでしょう。
簡易内管施工士に関しては、ガスのマイコンメーターから下流の露出配管およびガス栓をいじることができますが、これは一般の方がこの資格を取ったらその作業ができるというものではなく、ガス事業者およびその下請け施工会社の中で、この資格を有している人が作業できるというものとなります。つまり、既にプロとして仕事をしている人が取得するための資格です。
なお、ガス機器設置スペシャリストも資格取得する際に実務経験が必要です。
また、ガス栓の向きを変えるなどの行為は一般の人は絶対にやってはいけません。

【ガス湯沸かし器工事に関連する資格】

  • ガス可とう管接続工事監督者
    ガス機器設置スペシャリスト
    簡易内管施工士
    ガス消費機器設置工事監督者
    液化石油ガス設備士
    • ガス湯沸かし器の着脱など
  • 電気工事士
    • 電源コンセントの増設や移設
    • アース工事
  • 給水装置工事主任技術者
    • 配水管(水道)との接続

こちらもガス機器としてガスコンロの資格に準じたものとなりますね。
ガスコンロの工事資格に追加としてガス消費機器設置工事監督者というものが加わります。
また、電気工事士の資格が必要な場合もまれにあります。アース工事とは、新たにアース棒を設置する工事で、ここで必要なものは通常D種設置工事と言って簡単なものですが、きちんとした工事をするには知識も技術も道具も必要となるものです。
給水装置工事主任技術者とは一軒家の場合は確実に、またマンションやアパートでも給水タンク等がない場合は必要となる国家資格です。
簡単に説明すると、万が一汚水が一般の水道管に流れ込んでしまった場合に、大規模な災害が起こりうるため、きちんとした知識を持って作業ができるという証明になります。給水タンクなどで一般水道と縁切りされている場合(すべてのタンクがそうであるわけではない)には、この資格がなくてもいいことになってはいますが、マンション内部での災害防止の意味も含め、資格者での工事をお勧めします。

【エコキュート工事に関連する資格】

いくつかの資格は必ず必要となっています。

  • 電気工事士
    • 電源工事
  • 給水装置工事主任技術者
    • 配水管(給水・給湯)の接続など
  • ガス機器設置スペシャリストなど
  • エコキュートはコンセントで電源を取るわけではないので、もちろん電気工事士の資格者による施工は必須となります。
    そして、電気とは縁の遠そうな水道の資格も必要となります。エコキュートが出始めた当初はオール電化住宅を構成する要素としての位置づけが大きく、電気関係から入っていく会社も多かったのですが、この資格が大きな障害となり参入をあきらめた会社や無資格のまま工事を行っている会社が多かったようです。
    逆に水道から入った会社では電気工事士の手配にも苦労したようですが、現在はそれぞれの専門業者がうまくコラボレーションしたり、多能工のような人材をそろえた会社がやっていることもあるようです。

【照明工事に関連する資格】

  • 電気工事士
    • 直接電気配線を着脱する場合
    • 引っかけシーリングの取り付け、または交換

照明工事は簡単だと思っている方が多いかもしれませんが、ブラケット照明やオフィスなどの蛍光管照明器具などはほとんどが電気工事士の資格が必要です。
また照明の壁埋め込みスイッチの交換なども電気工事士の資格が必要になります。

【温水洗浄便座工事に関連する資格】

  • 給水装置工事主任技術者
    • 水道管の分岐など
  • 電気工事士
    • 電源コンセントの増設、移設など

こちらもガス湯沸かし器やエコキュートなどと同様、水道の分岐等をする工事となりますので、一般配水管と直接つながっているところでは資格が必要となります。
コンセントのないトイレに温水洗浄便座をつけようとして、トイレのスイッチから電線を分岐して「便座の動作がおかしい」なんて話を聞いたことがありますが、これは電気工事士の資格を持っていない人の工事でしょうね。通常照明のスイッチからコンセントの電源を取ることはできません。

【その他の工事に関連する資格など】

  • 給水装置工事主任技術者
    • ビルトイン食器洗浄機
    • ビルトイン浄水器
  • 電気工事士
    • 電気コンセントの交換、増設
    • 壁埋め込みスイッチの交換、増設
    • 電源直結型機器(業務用機器など)の撤去、設置
    • ブレーカーの交換
    • 太陽光発電工事
    • その他の発電設備工事
    • ドアホン、インターホン工事(電源直結型)
  • あと施工アンカー施工士
    • テレビの壁掛け工事
    • エアコンの壁掛け工事
    • その他あと施工アンカーを施工する工事

「家電」設備工事として見過ごされがちなのは、給水装置工事主任技術者の資格かもしれません。
今は当たり前に水道水が飲める環境ですが、これもきちんとした設備と施工があってこそです。
配水管に流れている水道水は、厳しい基準のものとなっていますが、ここに汚染された水が混ざりこむとあっという間に大災害につながる可能性があります。
そのため、洗面台の蛇口の高さなどにも厳密な規定があり、万が一事故により負圧がかかっても、蛇口から汚水を吸い込まないような離隔を設けるような規定もあったりします。

電気工事士はとても身近な資格ですね。家庭内では様々なところで使う資格とも言えます。
試験自体はそれほど難しくないものですので、まれに「そんな資格は持っていなくても大丈夫」という人がいますが、そんな簡単な資格だからこそきちんと取得してから仕事をしてもらう必要があります。
無免許の電気工事を依頼することは、無免許のタクシーに乗るのと同じだと思ったほうがいいでしょう。
ちなみに、現在のところ最年少資格取得者は中学1年生です。とは言え、やはり資格を取るには知識と経験(少なくとも実技試験対策としての)が必要になる資格です。

あと施工アンカー施工士は国家資格ではなく、現在のところ法律による制限等も無い作業に関する資格ではありますが、現在ほとんどの建設現場ではこの資格がないとあと施工アンカーを施工することができません。
この「あと施工アンカー」とは耳慣れない言葉だと思いますが、文字通り「あとから施工するアンカー」のことで、かなり多くの種類が当てはまります。
特に重要視されているのはコンクリートに打ち込むアンカーですが、石膏ボード用のアンカーなども当てはまります。
一般家庭の中でアンカーを打ち込むときに、現場監督がいるわけでもないでしょうからこの資格を持っていないと仕事ができない、ということはないでしょうが、やはりきちんとした知識を持って施工しないとアンカー本来の耐力を十分発揮できないので危険ですね。

こういったきちんとした知識や資格がないと作業が危険なものなども、今では簡単にホームセンターで手に入ってしまうので、素人施工が増えてしまっている気もします。
ちょっと器用な人なら実際うまくやれてしまうことも多いと思いますが、資格などがあるものは施工そのものだけではなく、それに関係する多くの知識や事例を学びます。そういった知識がないと思わぬ事故につながることがあります。