2018年改めて4K8K新衛星放送に備えて、ケーブル比較テストを行っています、よろしければそちらも併せてご参照ください。

こんにちは。クラウンクラウンの松本です。
某質問掲示板で「アンテナケーブルはどれを使えばいいでしょう?」と言うような質問があると、決まって「S-5CFBじゃないとだめ」と言う、いわば高性能信仰的な答えをよく目にします。
ですが、実際には細いケーブルもよく売られており、見える場所に配線しなくてはいけない場合など、極力細く目立たないケーブルで配線したいと思うのが一般的でしょう。
では本当に、細いケーブルは使うべきではないのか、クラウンクラウンが独自に検証してみました。

内容

今回の検証で使用したのは以下の4種類のケーブルです。

  1. 弊社で通常工事に使っているケーブル(S-5CFB)100m、および10m
    現在はS-5CFBT(三重シールドタイプ)に変更となっています。
  2. ELECOM アンテナケーブル 極細 L-S型 10m ブラック DH-ATLS100BK
  3. 4Cアンテナケーブル 10m ストレート⇔L型プラグ 地上・BS・CSデジタル放送対応 ライトグレー 金メッキ端子
  4. DXアンテナ製BSアンテナキットに付属しているケーブル(おそらくS-4CFB)15m

S-5CFB 100m(その後10mに切断)

S-5CFB 100m(その後10mに切断)


極細アンテナケーブルDH-ATLS100BK

極細アンテナケーブルDH-ATLS100BK


S-4CFB 10m

S-4CFB 10m


BSアンテナに付属のS-4CFB 15m

BSアンテナに付属のS-4CFB 15m


今回の測定はマスプロ電工社製LCT4で行いました

今回の測定はマスプロ電工社製LCT4で行いました

測定の仕方は以下の通りです。
社内アンテナ端子より基本数値を測定後、計測に使用したケーブルの先端にそれぞれのケーブルを延長接続して測定。
基本データ

ch 16 21 22 23 24 25 26 27 28 30 32 BS
受信レベル 44.9 55.6 56.1 59.1 59.6 60.5 59.9 59.3 56.5 41.1 54.6 75.1
MER 24.0 30.0 30.0 30.0 30.0 30.0 30.0 30.0 30.0 22.8 30.0
BER 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1.1 E-7 0

受信レベルは電波の強さを表し、基本的に大きいほどいい。MERとBERは電波の質を表しMERは30を上限とし大きいほどよく、BERは小さいほどいい。BERの表記は指数表記で1.1 E-7とは0.00000011のこと。BSはMERとBERの測定をしていない。

 
この先は、4種類のケーブルそれぞれでデータがどう変化したのかを表したものです。
受信レベルについては、その差(減衰量)を、MERとBERに関しては変化後の数値そのものを表しています。は変化がなかったことを意味しています。

S-5CFBを100m延長して測定

S-5CFBを100m延長して測定

ch 16 21 22 23 24 25 26 27 28 30 32 BS
差分 -13.5 -14.5 -14.4 -14.4 -14.8 -14.8 -14.9 -15.0 -15.1 -13.4 -15.0 -23.1
MER 20.3 29.3 17.6
BER 1.1 E-5 4.5 E-3

極細アンテナケーブル(10m)を接続して測定

極細アンテナケーブル(10m)を接続して測定

ch 16 21 22 23 24 25 26 27 28 30 32 BS
差分 -5.1 -5.6 -5.8 -5.5 -6.1 -6.1 -5.9 -6.3 -6.2 -6.3 -6.0 -11.6
MER 22.9 21.9
BER 1.7 E-7 3.3 E-6

S-4CFB(10m)を接続して測定

S-4CFB(10m)を接続して測定

ch 16 21 22 23 24 25 26 27 28 30 32 BS
差分 -2.5 -2.3 -2.4 -2.2 -2.8 -2.6 -2.6 -2.8 -2.5 -2.5 -2.2 -4.6
MER 23.0 22.1
BER 1.2 E-6

BSアンテナ付属のS-4CFB(15m)を接続して測定

BSアンテナ付属のS-4CFB(15m)を接続して測定

ch 16 21 22 23 24 25 26 27 28 30 32 BS
差分 -2.7 -3.2 -2.9 -3.0 -3.3 -3.5 -3.3 -3.4 -3.2 -3.5 -2.9 -5.9
MER 23.6 22.1
BER 1.6 E-6

S-5CFB(10m)を接続して測定

S-5CFB(10m)を接続して測定

ch 16 21 22 23 24 25 26 27 28 30 32 BS
差分 -1.7 -2.1 -2.0 -1.7 -2.5 -2.2 -2.0 -2.3 -2.0 -2.3 -1.9 -3.7
MER 23.6 22.3
BER 1.1 E-7

測定結果

平均値 地デジ BS その他
S-5CFB(10m) -2.08 -3.7 充分な性能だと言える。
S-4CFB(10m) -2.52 -4.6 充分な性能だと言える。
S-4CFB(15m) -3.20 -5.9 充分な性能。
15mだと考えるとかなりいい結果。
極細ケーブル(10m) -5.89 -11.6 極細と言っても今回試したのは3C程度の太さがあった。
BSの劣化の仕方は顕著。
S-5CFB(100m) -14.48 -23.1 単純に数値は大きいが、100mと言うことを考えると充分。
30chのMER、BERの劣化は元の電波状況を考えると仕方ない。

やはり、S-5CFBが一番性能がいい(劣化が少ない)ことが分かった。
他のケーブルも壁からテレビまでのケーブルとして使う分には、特に問題にはなりにくいだろうと思います。
ただし、今回試したケーブルの中で「極細タイプ」は特にBS電波の劣化が大きいため、ブースターを入れずに分配している家などでは使用に気をつけてください。
例えば弊社での工事データによると、最近の新築一戸建てで6分配の場合、BSアンテナ直下の受信状況と比べてアンテナ端子では-20程度受信レベルが劣化しています。
ここから上記の極細ケーブル1本でつなげるだけならいいのですが、レコーダーを経由したり、更に分配などを行うと障害が出てくる恐れがあります。
目安としては、BSアンテナ直下での受信レベルが80dBμV弱、アンテナ端子で60dBμV弱となっているのですが、今回の測定結果から考えるとこの極細ケーブルを接続すると45~50dBμV程度になると考えられます。このあたりが限界で、40dBμVを下回ると安定受信は難しくなってきます。
またBSアンテナは悪天候の影響も受けやすいですから、普段からギリギリの状況でご覧になっていると、悪天候の時は必ずブロックノイズが入るということにもなりかねません。
なお今回はCSの計測をしておりませんが、CSの電波はさらに劣化していると考えられます。
 
S-5CFBの10mの結果と100mの結果を比べて10倍になっているわけではないのは、先端のコネクタや中継コネクタでの劣化も影響しているからでしょう。
巻いている状態だったことはおそらく影響しておりません。以前、100mのアンテナケーブルを巻いた状態と伸ばした状態でその劣化状況を確認したことがありますが、結果は変わりませんでした。(※以前のデータの時とケーブルのメーカーは変わっていませんが、バージョンアップしています。)
 

総評

マンションなど十分な強さで電波が供給されていると思われる場合は、極細ケーブルなどでもそれほど困ることは少ないでしょう。
もちろんそういう場所でも使えないケーブルであれば継続販売はされていないと思いますが・・。
ただし、BS(CS)をご覧になる場合で、特に目につく場所でなかったり配線が複雑になる場合などは、少し太めのものを使った方が良いでしょう。
もちろん短いに越したこともないので、配線の取り回しがギリギリにならない程度で短いものを使った方が良いです。
 

今回の表にある受信レベルは、工事などでは共通の単位を用いていますが、テレビ本体などで表示されるアンテナレベルとは異なるものです。テレビ本体で表示されるアンテナレベルとは、今回測定している受信レベルとMERやBERと言った電波の質などを組み合わせ、メーカーそれぞれが独自に作った単位です。 ですが、それらも一般的には充分な指標になりますから、例えばアンテナレベルの表示が低い場合は極細ケーブルなどは使わないようにするなどの工夫をされるといいでしょう。

今回の記事は簡易的な測定をもとに書いており、それぞれの商品の性能等を保証、批判するものではありません。一つの目安として考えてもらえましたら幸いです。

ちなみにこういったプラグもアンテナ配線の時には便利です。